希少種と外来種

注目トピック:カラカネイトトンボ


カラカネイトトンボ

カラカネイトトンボは、札幌市版レッドリストで「絶滅危惧ⅠA 類」として掲載(けいさい)されています。体の長さが25mm程度(ていど)の、とても小さいトンボです。体の幅(はば)もたいへん細くて、か弱い印象(いんしょう)ですが、その美しさは際立(きわだ)っています。

私たちは、カラカネイトトンボを一目見たいと出かけました。訪(おとず)れたのは、札幌市北区にある福移篠路湿原(ふくいしのろしつげん)。でも、天気はどんよりと曇(くも)り。風も強くて、今にも雨が降りそう。どうなることやら。

今回、私たちを案内してくれたのは「カラカネイトトンボを守る会」の綿路昌史(わたじまさし)さん、千鶴子(ちづこ)さんご夫妻(ふさい)です。
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必見!カラカネイトトンボ取材動画



カラカネイトトンボを探(さが)しに行きました!!

写真と文章で、取材の様子を紹介(しょうかい)します。上の動画もあわせてご覧ください。

札幌にわずかに残された湿原(しつげん)へ

私たちが訪(おとず)れたのは、札幌市北区にある福移篠路湿原(ふくいしのろしつげん)です。周囲をパークゴルフ場や埋立地(うめたてち)に囲まれたなかで、わずかに残されたごく小さな自然の湿地です。札幌市内でこんな湿地が残っているのはここだけと言っていいくらい貴重(きちょう)です。

左の写真が、カラカネイトトンボを探した湿地の風景です。
右の写真は、少し高い場所から湿地を見おろしたものです。奥のほうに湿地が残っていますが、手前のほうは乾燥化(かんそうか)がすすみ、外来種の植物などがたくさん茂(しげ)っています。
カラカネイトトンボ カラカネイトトンボ02

さあ、見つかるかな?

今回、私たちを案内してくれたのは「カラカネイトトンボを守る会」の綿路昌史(わたじまさし)さん、千鶴子(ちづこ)さんご夫妻です。
綿路昌史さんは長いあいだ、札幌拓北高校(さっぽろたくほくこうこう)や旭丘高校(あさひがおかこうこう)の先生として、おもに生物部の生徒たちといっしょに、たくさんの野外の生き物を調査(ちょうさ)・観察してきました。なかでも、どんどん減(へ)っているカラカネイトトンボの保護(ほご)活動に熱心に取り組んできました。

カラカネイトトンボ02 カラカネイトトンボ

どんなところにいるの?
さて、カラカネイトトンボはどういう場所にいるのでしょうか?ふつうトンボは水の中(の草など)に卵(たまご)を産みます。カラカネイトトンボもきっと水のある場所にいると思って探(さが)しますが、なかなか見つかりません。

綿路さんが、カラカネイトトンボは小さな”チトー”に卵を産むと教えてくれました。はじめ”チトー”と聞いて「なんだろう?」と思いましたが「池塘(ちとう)」のことです。池塘とは、池や沼(ぬま)のように水のたまっている場所のことを言いますが、池や沼とよぶにはずっと小さい水たまりも含(ふく)まれます。
篠路福移湿原では、自然にできた池塘に加え、その昔、泥炭(でいたん)をほり出していた時代にできた、とても小さな池塘がたくさんありました。こうした小さな池塘がカラカネイトトンボを支(ささ)えてきたのです(しかし、どんどん無くなっているそうです)。

カラカネイトトンボ02 カラカネイトトンボ02

なぜ小さな池塘?
なぜ、カラカネイトトンボは小さな池塘を使うのでしょうか。綿路さんによると「少し大きめの池には、他の種類のトンボも卵を産みに集まります。おそらく小さなカラカネイトトンボは競争に負けてしまうのでしょう」とのこと。アオイトトンボという、やはりとても細くて小さいトンボを見かけましたが、このアオイトトンボですら、カラカネイトトンボに比(くら)べると大きく、カラカネイトトンボをつかまえて食べることもあるそうです。

カラカネイトトンボ カラカネイトトンボ02

ついに発見!カラカネイトトンボ

そして、とうとうカラカネイトトンボを発見しました。なんて小さいのでしょう。急いでビデオカメラを向けますが、あまりに小さくてピントもあいません。しかし、私たちのカメラは奇跡的(きせきてき)にその美しい姿(すがた)をとらえて、ピントを合わせてくれました。その様子が下の動画です。最近のビデオカメラは高性能(こうせいのう)ですね。

これだけ小さく美しいトンボなので、見つけた喜(よろこ)びもひとしおです。「いつもなかなか見つけられません。子どもたちのほうが先に見つけて教えてくれます」と千鶴子さん。私たちはとてもラッキーでした。

カラカネイトトンボを脅(おびや)かすもの

カラカネイトトンボは生き残れるか

消えゆく札幌の湿原(しつげん)
もともと石狩平野(いしかりへいや)は、その大半が湿地(しっち)でした。そのため、現在(げんざい)の札幌市内にもたくさんの湿地がありました。しかし、そうした湿地は次々と姿(すがた)を消しています。シマアオジやアカモズといった草原性(そうげんせい)の鳥も、この20年ほどの間にすっかり姿を消してしまいました。
今回訪(おとず)れた福移篠路湿原は、札幌に残された最後の砦(とりで)なのです。

うめ立てられる湿地。そして乾燥化(かんそうか)
福移篠路湿原は、周囲(しゅうい)がどんどんとうめ立てられ、年々環境が悪くなっているそうです。「カラカネイトトンボも風前の灯(ふうぜんのともしび:もう絶滅寸前という意味)です」と綿路さんも、寂(さび)しそうです。

今はうめ立てられていない湿原にも、周囲のうめ立ての影響(えいきょう)は見られます。湿地内の水位が下がり、カラカネイトトンボの生息に欠かせない小さな池塘がどんどん失くなっているのです。
綿路さんたちは、カラカネイトトンボを守る会のメンバーとともに、池塘を作り出すため、一部をほって水をためる作業をしたりしましたが、水位の低下を止めることはできませんでした。

カラカネイトトンボ カラカネイトトンボ02

生い茂(しげ)る外来種
うめ立てられた場所の近くでは、乾燥化(かんそうか)とともに外来の植物が一気に侵出(しんしゅつ)しています。こうした外来の植物が直接的(ちょくせつてき)にカラカネイトトンボに影響をあたえるわけではありません。しかし間接的(かんせつてき)に、湿地の環境が変わるスピードを早めてしまい、カラカネイトトンボをはじめとする湿地性・草原性の生き物の住むところは失われていくでしょう。

カラカネイトトンボ カラカネイトトンボ02

残したいと願う気持ちを

カラカネイトトンボを守る会では、協力してくれる人を募(つの)り、この湿地の一部を買いとって、保護活動を行っています(左の写真)。なんとかカラカネイトトンボとその生息環境が、この先も残り続けて欲しいと願っています。
国立公園や自然保護地区といった法律(ほうりつ)に守られている土地”ではない”場所にだって、カラカネイトトンボのような貴重(きちょう)な生き物が生息しています。できるだけ多くの人に、こうした生き物のこと、貴重な生息環境のことを知ってもらいたい、残したいと願う気持ちを共感して欲しいと、取材を通して強く感じました。

カラカネイトトンボ カラカネイトトンボ02

追記:カラカネイトトンボの生息地には小さな池塘があります。はまると長靴(ながぐつ)の中がずぶ濡(ぬ)れになるので注意しましょう。

外来種とは?



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