希少種と外来種

注目トピック:クロテン(エゾクロテン)


クロテン

クロテン(エゾクロテン)は、札幌市版レッドリスト2016で最も絶滅(ぜつめつ)の危険が高い「絶滅危惧ⅠA類」に、ほ乳類として唯一(ゆいいつ)指定されています。
かつては北海道中に広く分布していたと考えられていますが、毛皮を目的とした乱獲(らんかく)などの影響で絶滅寸前まで減少しました。また、外来種のニホンテン(テン)が定着し分布を拡大させたことにより、道南地域から石狩低地帯(いしかりていちたい)の間では、クロテンがほぼ絶滅してしまったと考えられています。
環境省のレッドリスト2020では、準絶滅危惧に指定されています。


クロテンを見てみよう!

北海道には、クロテンのほか、オコジョやイイズナといったイタチの仲間が生息していますが、いずれもたいへん警戒心(けいかいしん)が強く、山や森でときどき出くわすこともありますが、あっという間に隠(かく)れてしまいます。自然の中ではなかなかゆっくり観察することができません。

釧路市動物園にはクロテンがいます。飼育展示(しいくてんじ)されているのは「てんてん」と名付けられた個体です。

 >> 釧路市動物園の「エゾクロテン」」のページ

「てんてん」もとても警戒心が強く近寄るとすぐに隠れてしまいますが、今回は釧路市動物園から画像と動画を送っていただきました。
クロテン クロテン

元気に走りまわるクロテンの姿をご覧(らん)ください。




クロテンとニホンテンの見た目、どう違う?

クロテンもニホンテンも、野外では見つけにくい動物ですが、調査用にしかけた自動撮影カメラには写ることがあります。クロテンの保全を進めるには、こうした画像からクロテンとニホンテンを見分けることが大事ですが、なかなか難しい場合もあります。
二種の見た目の特徴の違いを紹介します(平川ほか2010の”北海道に生息するクロテンとニホンテンの識別ガイド”を参考にしました)。

クロテンの特徴

クロテン
 クロテンの特徴は、首筋(くびすじ)から尻尾(しっぽ)にかけて、毛の色が濃くなることです。尻尾の先が体の中でもっとも暗い色になります。
 (イラストは、冬に比較的多く見られる特徴を表現しています)

 「クロテン」という名前から連想(れんそう)するように、全身が黒っぽい個体もいますが、多くの個体はそこまで黒くないようです。体の色合いには、個体差(こたいさ)が大きく、全体的に色が薄(うす)く尻尾の先だけが黒い個体や、それほど黒くない個体もいるようです。季節変化(きせつへんか)もあり、一般的に夏のほうが色が濃く、冬はより薄くなるようです。
 顔が黒い個体を「クロテン」と思いがちですが、下記に示すように、顔が黒いのはニホンテンに見られる特徴なので要注意です。

このページの一番上の写真や、釧路市動物園提供の動画で、特徴を確認してみてください。

ニホンテンの特徴

ニホンテン
 ニホンテンの特徴は、顔に黒い部分がある(おもに夏)、尻尾の先が付け根よりも白っぽい、体が全体が明るい黄色(冬)、のいずれかです。これらはクロテンには無い特徴なので、このどれかにあてはまればニホンテンだと見分けられます。ただし個体差が大きく、どれにもあてはまらない個体もいるようです。
 (イラストは、冬に比較的多く見られる特徴を表現しています)

 まず、夏期のニホンテンは、顔が黒い毛で覆(おお)われます。また、尻尾の先端側(せんたんがわ)が、付根(つけね)側よりも、淡色(たんしょく:白っぽい色)になります。ただし個体差が大きく、この特徴にあてはまらない個体もいるようです。体の色も、明るい褐色(かっしょく)から、かなり黒っぽい色まであるそうです。
 冬期は、顔全体が白っぽくなります。体の色は、足の先以外は、全体的に明るい黄色になります。北海道で確認されているニホンテンの特徴は、本州で”キテン”と呼ばれるタイプにあてはまります(本州には”スステン”と呼ばれるタイプもいます)。冬でも、尻尾の先は根本(ねもと)よりも淡色ですが、その特徴は、夏よりも不鮮明(ふせんめい)だそうです。

”ピックアップ!札幌の外来種”のページに、自動撮影カメラにうつったニホンテンの動画があります。これらの特徴を確認してみてください。
  ニホンテンの動画へ

さらに詳しく

二種の特徴の違いは、平川ほか(2010、哺乳類科学)の「付録:北海道に生息するクロテンとニホンテンの識別ガイド」を参考にしました。

クロテンとニホンテン、それぞれの個体変異(こたいへんい)について、以下のサイトで詳しく紹介されています。

 >> 北海道に生息するクロテンとニホンテンの識別ガイド


札幌周辺のクロテンはいま?

 下の図は、石狩低地帯(いしかりていちたい)周辺のクロテンとニホンテンの生息記録です。石狩低地帯とは、石狩湾(いしかりわん)から太平洋(たいへいよう)にかけて広がる平野です。2000年から2015年の間に、交通事故などによる死体の回収や、自動撮影カメラを用いた調査、市民からの情報提供などから集めた、さまざまな情報が集計(しゅうけい)されています。ピンク色の丸はクロテンが確認された地点、黄色の丸はニホンテンが確認された地点です。

 石狩低地帯の西側では、黄色で示すニホンテンのみが確認されており、クロテンはすでにいなくなってしまったと思われます。ピンクで示すクロテンは東側で確認されています。野幌森林公園では、ニホンテンとクロテン両方が記録されています。

クロテンの分布
図:石狩低地帯周辺のクロテン(ピンク色)とニホンテン(黄色)の確認地点
(平川ほか,2015,哺乳類科学55(2)の図3をもとに、著者の承諾を得て作図)

このように石狩低地帯は、希少種クロテンと国内外来種ニホンテンの分布の境目(さかいめ)になっています。札幌周辺でも、定山渓(じょうざんけい)などの南西部ではすでにニホンテンが分布を占めているようです。すでに札幌市内でクロテンに出会える機会(きかい)はほとんどないかもしれません。これからもさらにニホンテンの分布が拡大し、クロテンが減ってしまうのでしょうか。

参考文献

(1)拡大・縮小はどこまで進んだか―北海道における在来種クロテンと外来種ニホンテンの分布―
  平川浩文,木下豪太,坂田大輔,村上隆広,車田利夫,浦口宏二,阿部豪,佐鹿万里子
  哺乳類科学 55(2):155-166,2015
(2)北海道に生息する在来種のクロテンと外来種のニホンテンは写真で識別可能か?
  平川浩文,車田利夫,坂田大輔,浦口宏二
  哺乳類科学 50(2):145-155,2010



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